2013年10月31日

萌えミリパッチを作る(その5)清書とデータ作成

おはようございます。
本日関西圏の番組に出てたとか出てなかったとか・・・沖縄では見れず残念なsacomです。



ブログで長文を書くのは大変ですが、データ作成がスムーズにできるよう、作り方の流れを知っていただければ幸いです。

なお、工程において一番大変なのは「刺繍データ作成」にあります。
刺繍は機械がダダーってやってくれますが、データは人の手で行うわけですからね。

なお、デザイン業界においてはグラフィックソフト「イラストレーター」がよく使われており、刺繍をやってみたいという方にも、イラストレータが基準と考えている方も少なくないと思います。
印刷業界などはほぼイラストレーターが基準になってるかと思われますが、私は一切使えません。

また、刺繍の講習会でもこの話をするのですが、「イラストレーター基準で考えると、刺繍は絶対に上手くいかない」が経験上思っていることです。
イラストレーターを刺繍データに変換することのできるソフトがあるのですが、大変高価なうえ、印刷みたいにそのまま刺繍されるということはまずありません。
力学特性その他いろいろを考慮しながらデータを作る必要があるわけです。
印刷だってインクの調合の職人さんとかいるわけですから、「データがそのまま出力される」という意識は、このさい除いていただければと思います。
(もちろん、できるだけデータに近い形で作る努力をいたします。)

 さて、前回記事ですっとばした「清書」の方法について、詳しく知りたいという意見がありましたので、後付けになってしまいますが清書の方法を書いてみます。
 なお、イラストレーターはじめグラフィックソフトを用いる場合も、この手法を用いて下書きすると、「これは刺繍できません」ということにはなりにくいです。


前回記事(その2、その3)で描いたラフスケッチで、構図やキャラクターの設定をまとめます。
この段階では、ざっと描いただけでよいですが、清書となりますと「できるだけ丁寧に書く」を意識していただくことになります。

得意不得意もありますが、あまりにも雑に描かれているとバランスがとりにくく、作業段階でも大変苦労します。
どうやってバランスを取るかという点については、ラフスケッチを何度も行うことにあります。

何度も描くことで、バランス等もだんだん固まっていきます。
3回よりは5回、5回よりは10回と、バランスに注意しながら書いていくことで、普通はまとまっていきます。

もちろん、一発で描けるテクニックがあるなら問題ありませんが、イラストに自信がないという方は、苦手だからと思わずに、とにかく「手を動かす」ことが大事ではないかと思います。

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ラフスケッチをもとに清書していきます。
今回は「1mm程度のサインペン」で「実際サイズ」で、構図が固まったラフスケッチの上に別の紙を重ね、上からなぞっていきました。

円形はコンパス等を使い、また、直線にはできるだけ定規を使います(作例では外周、帯の内側の円、めいどいん沖縄のハンコ)寸法があっていればフリーハンドでもいいです。参考のイラストはスケッチ段階でコンパス等を使い、ペン清書ではフリーハンド。

また、下書き段階で大きく書いてしまった場合、コピーの拡大縮小を利用して現物サイズに近づけていただければ、それでも結構です。実際サイズ÷下書きのサイズ×100で、拡大縮小率が割り出せます。


「実寸サイズ」で描いた前提としてですが、太目のサインペンで描くメリットとしては
●刺繍でなめらかな線を作りやすい太さを確保できる
●このペンで描けない文字は、刺繍できないと心得る(注1)

があります。

下の画像(注1)に注目いただきたいのですが「意識」という字を書こうとしたところ、ぐちゃぐちゃになってしまいました。字が汚いのも原因なのですが、実寸サイズで1mm程度のサインペンで描いて読めない字は、ほぼ間違いなく刺繍することができません。


清書でアウトライン(線)ができたら、数枚「モノクロコピー」を取り、コピーした絵に着色ないし注意書きを書き込みます。色の指定は注釈で描いていただいても構いませんが、赤ペンなど別の色で書いていただくとわかりやすいです。
(自分自身黒で書いて「わかりにくいなー」と感じました・・・)




なお、モノクロの線のみの絵と、着色した絵(色鉛筆でもかまいませんが、濃い色で)、注釈を入れた絵の3枚があると大変作業しやすいです。

あと、ついでにこういうのがあると有難い・・・というものですが、オリジナルでキャラクターを作った場合、細かいパーツがわかりにくい事があります。

今回の場合、(注2)に示すリボンが見づらかったので、リボンである旨表示します。リボン程度なら作れますが、細かい絵があると助かります。

また(注3)でメイドさんのカチューシャが「カチューシャとヘッドセットが一体になっている」ことと、エプロンは「エプロン風チェストリグ」になっている旨示し、チェストリグのおおまかな設定画を記載しています。また、カラーは陸自迷彩(2型または3型)になっているという注釈も入れます。



さて、一言にイラスト、デザインと言っても得意不得意があり、丸投げされて困る図案と困らない図案があります。
多くの場合丸投げは辛いですが、銃火器の場合、丸投げされたほうが書きやすい絵でもあります。だいぶ細かくなってペンでは描けないので、注釈にてハンドガンはP220サイレンサー付きと記載します。
ハンドガンはメイドさん本体と別の手法で作っていくので、太いラインで書く必要はありません。


ハンドガンはあとで書き足し、スキャナーで読んで立体的に作りこんでいます。

なお、銃火器を指定される場合、「銃っぽい形」が書かれている程度で結構なのですが、銃器の名前はオプションなど、注釈入れていただけると助かります。一言にM4としても、レイルの有無、装備(ダットサイトやスコープ、グリップ、グレネ
ードなど)で印象がだいぶ変わりますからね。

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こうして完成した下絵を、スキャナーまたは写真で撮ってメールで送っていただくか、郵送いただいて見積もりし、OKいただいたらデータに着手します。このさい注意点は・・・

☆写真の場合真正面から撮影する。斜めになると形がわかりにくい。撮影は明るい場所で!
☆郵送の場合、必ずコピーで。見積もり比較などをする場合も想定されるので。

があります。


データについては、刺繍ソフトに原画を取り込み、なぞって書いていきます。
先に紹介したイラストレーターは一切使いません。変換しても上手くいかないためです。
ここからは専門技術の話になるのですが、いろんな条件を考えながら書きます。

すべて紹介するわけにはいきませんが

☆どこからどこに針を進めるか。縫う順番
☆縫い方の方向・・・一定方向で縫うか、なめらかに方向を変えていくか。

については、恐らく一般的なグラフィックソフトで考慮する必要のない条件であり、逆に刺繍では常に考えなくてはならない要素です。特に縫う順番はパズルとか迷路のようです。
これを考えながらデータを作っていきますが、今回の作例の場合、150点くらいのパーツを作りこんで、それぞれのパーツに始点終点を設定し、できるだけスムーズに縫えるよう作るわけです。

「何度も下書きをして構図を決めてほしい」
「チーム内で吟味してほしい」


というのも、図案変更があった場合、単に「絵を手直しする」というものではなく、上記の要素を考えながらデータを作るためなのです。

いざ修正を加える作業となると、修正すべきパーツを探すところからはじまり、順番や糸の流れをチェックし、時には流れをカットしたり、渡り糸(びょーんと伸びる余計な糸)が出ないように針を運ぶバイパスを作ったりと、いろんな事を考えなくてはなりません。これが実に大変な作業なのです。

写真の不要な糸が「渡り糸」です。
ハサミで切ったり、ミシンにオートマチックで切らせたりします。



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では作例の「めいどいん沖縄パッチ」も、修正がなかったかといえば、そんなこともありません。
データのイメージができて、「やっぱりこうすればよかった」というのが出てきます。

☆sacom worksのマークの三毛猫が「まねき猫」なので、左手はまねき猫がよい(肉球にこだわりすぎた・・・)
☆胸がなさすぎるので(チェストリグの影響も・・・?)、胸を大きくした

という修正を加えました。

実際に出た作業は
☆左手のパーツをカットして、そこに糸を運ぶバイパスを作って招いている手のアウトラインを作り、面や肉球を手直し。肉球や白い部分の形状のほか、バイパスを設定。
☆胸を強調するため、リボンとチェストリグを全体的に変形。アウトライン、面(迷彩の各パーツ)もすべて変形。バイパ
スの設置や位置変更


と、ほんのちょっとした修正に、複雑な作業を加えるわけです。


この後、テスト縫いを行い、エラーやズレを修正、製品サンプルとして仕上がります。



写真の”sacom worksめいどいん沖縄パッチ”については、「sacom works通販部」にて販売しております。
もし「欲しい」という方がいらっしゃいましたら、現在補充中ですので在庫状況時折チェックしてやってください。

sacom works通販部
http://sacomworks.cart.fc2.com/


sacom worksホームページ

http://sacomfact.web.fc2.com/





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Posted by sacom(モソP)  at 10:56 │技術情報sacom技研