2016年05月27日
陸上自衛隊エンブレム 刺繍化
出展元:陸上自衛隊ホームページ
みなさんこんにちは。
sacom worksです。
今日は陸上自衛隊ホームページにありました「エンブレム」について、”もし刺繍パッチ化する場合”という検討を紹介したいと思います。
まず、たびたび紹介していることですが「良いデザイン=良い刺繍パッチ」ではありません。
また、エンブレムについては賛否が出ているようなのですが、そういう話ではなく、今回も刺繍技術上の話として進めていきます。
結論から書きますと、「円形については、一部業者のみかろうじて刺繍可能・・・かな」という印象です。
一部業者というのはウチも含まれます(笑)
はい、営業ですね・・・
あくまでも技術上の話としての見解ですが・・・
【a.①に図示する「Since1950」の字が、実用サイズとして小さすぎる】
刺繍サイズには実用サイズがあって、たとえば米海軍のパイロットのようにベタベタとパッチを貼れるのであれば問題ありませんが、陸上自衛隊の場合は「ブラザード型ペン挿し」に貼るか、最近支給される迷彩服にはベルクロが縫い付けられているので、そのサイズに収まる必要があります。迷彩服のベルクロは目視8cm程度の円形が右肩に付いていますので、少しはみ出すくらいの8.5cmの円形で作ったとして、恐らく
「Since1950」の字は3mmを切っているでしょう。
通常の刺繍屋だと5mmが限界で、3mmは縫えなくはないものの、読めないものも多いです。うちはかろうじて読めるかな?くらいには作れそうな感じです(営業です・笑)
また、赤い帯に文字が載る形になるので、刺繍の上に刺繍を重ねることになります。糸どうしの噛み合いなどもあり、判読できなくなる可能性が高いです。
相対的に見た場合、「Since1950」や刀と鞘の絵が大きくなる円形、またはフチなしのパターンが刺繍向きであるといえます。
【b.パッチのフチを考慮する】
刺繍パッチの最も脆い部分は、フチの部分です。
ホツレ止めのために、ロックミシンか刺繍でフチかがりをしておく必要があります。なので、フチなしのパターンは直接刺繍の場合のみ使える図案で、パッチ向きではありません。
また、②に示すような角の部分はめくれやすく、真っ先に傷みます。洗濯でも衣類とこすれあったりしますし、湿気や水分の変形でめくれあがってくるので、あえてこの形で刺繍するなら、角を少し丸めるとよいです。
余談ですが、フチの処理についてはミリタリー業界では「メローエッジ(ロック加工)」が人気があります。人気というか「メローエッジが本物」という風潮ですね。
でも、実際に部隊の方からお話を伺うと、メローエッジはすぐにボロボロになるのであまり好まない隊員さんもいらっしゃいます。
刺繍をやってみてわかることですが、メローエッジは慣れが必要で複雑な形状には職人的な技術が要求されますし、新品状態でのフチは最も綺麗です。何よりもメローエッジは施工性がよく、次に示すヒートカットに比べると短時間でフチを作ることができ、また、失敗しても再び加工しなおすのでロスが少ないというメリットがあります。要するに大量生産向きなのがメローエッジというフチ処理方法なのです。
米軍ミリタリー業界では階級章やインシグニア(部隊章)パッチなど大量生産するさいには、どうしても施工性が優先されますから、そういう意味では流通が多くある意味「本物」と言えますが、一方で専用のロックミシンの流通が少なく、比例して糸色も少ないので衰退の一途を辿っているのも、メローエッジです。
他にはヒートカッターと呼ばれる上等のハンダごてで焼ききる「ヒートカット」とはさみで切り取る「ハンドカット」があります。
フチを作る仕様ではハンドカットが一番上部ですが見た目が悪いのと、洗濯のときにザラザラした切り口でゴミを拾ってしまいます。メローエッジとハンドカットの中間の性質なのがヒートカットで、sacom worksではヒートカットメインにしています。
sacom wroksのヒートカット/ハンドカットは、メローエッジ風に見せたいという苦肉の策から生まれた(笑)「二重ツイル」という手法です。少しだけ芯が飛び出る形ですが、従来のヒートカット/ハンドカットよりも仕上げは綺麗だと思います。
同業者の有名なところから、メローと勘違いされたこともありますので、たぶん普通のヒートカット/ハンドカットよりも綺麗なのだと自信をもっております(笑)
【c.総合的な観点】
これらを踏まえるとやはり刺繍パッチ化するならば円形が最も向いていると、刺繍屋的には思います。
サイズについては最近支給されている迷彩服に付いているベルクロのサイズ(恐らく8cm)にあわせて作るのがよいと思います。もちろんブラザード型ペン挿しにあわせて大きいサイズで作るのも一つの手ですが、10cmと8cmでは刺繍の都合、4割前後の料金の差が生じます。これは刺繍の針数(というか面積)の影響からです。
実は部隊用パッチの殆どは隊員さんのポケットマネーで作られているので、できるだけ安くしたいというのがありますし、また、国費で買うものでもやはりコストダウンというのは重要な観点だと思うのです。
また、コストの面だけではなく、大きすぎず小さすぎずの8cmなら、”主張しすぎないカッコ良さ”と、刺繍パッチ装着による士気向上の効果があるように感じます。
陸自のヘリパイロット、海上自衛隊の一部や航空自衛隊では大きめのパッチが好まれる傾向にありますが、陸自、特に地上で勤務されている方の間では少し小さめのパッチが好まれているという印象があります。
また、自衛隊法の施工規則などを読み解くと(おそらく現時点では)パッチに関しては公式なものにしか言及がなく、部隊によって理解あるとこと厳しいところがあります。今回のパッチが公式なものとして施工規則に掲載されるかは注目してみたいところです。
非公式の部隊それぞれで製作したパッチでも、パッチで士気があがりましたとか、災害派遣で被災者とコミュニケーションに役立った事例があったりしますし、パッチ交換で演習や海外でのミッションなどで、他の部隊や他国軍との親睦を深められたなどの良い側面あります。
是非とも普及してほしいと思います。
そしたら私の仕事も増えます(笑)
一方で、手袋など華美なものを避けるなどの基準に準拠するなどして、サブデュード化したほうが良いとも思います。
今回の公式エンブレムも、サブデュード化したらかっこよいのではないでしょうか。
なお、図案には金が使われていますが、刺繍のメタル金糸は糸にアルミのメッキをしているだけなので、すぐにボロボロになります。マットな金銀の刺繍糸を推奨しています。これは部隊用に限らず、どの刺繍でも同様な感じです。
なお、製作の検討というお話ですので、今のところ製作予定も販売予定もありません。
部隊の方から「ぜひsacom worksの精度でで作ってほしい」という要望があれば、駐屯地/分屯地あての納品という形で作らせていただくこともあるかもしれません。陸自隊員の皆様、是非ともよろしくおねがいいたします。
いずれにせよ公式エンブレムのため、許可のない形での一般販売予定はありませんので、悪しからず。
宣伝です。
漫画も描いております。
本業は何屋なんでしょう(汗)
コンビニ端末で両替できる”WebMoney”で読めます。
また、エンブレムについては賛否が出ているようなのですが、そういう話ではなく、今回も刺繍技術上の話として進めていきます。
結論から書きますと、「円形については、一部業者のみかろうじて刺繍可能・・・かな」という印象です。
一部業者というのはウチも含まれます(笑)
はい、営業ですね・・・
あくまでも技術上の話としての見解ですが・・・
【a.①に図示する「Since1950」の字が、実用サイズとして小さすぎる】
刺繍サイズには実用サイズがあって、たとえば米海軍のパイロットのようにベタベタとパッチを貼れるのであれば問題ありませんが、陸上自衛隊の場合は「ブラザード型ペン挿し」に貼るか、最近支給される迷彩服にはベルクロが縫い付けられているので、そのサイズに収まる必要があります。迷彩服のベルクロは目視8cm程度の円形が右肩に付いていますので、少しはみ出すくらいの8.5cmの円形で作ったとして、恐らく
「Since1950」の字は3mmを切っているでしょう。
通常の刺繍屋だと5mmが限界で、3mmは縫えなくはないものの、読めないものも多いです。うちはかろうじて読めるかな?くらいには作れそうな感じです(営業です・笑)
また、赤い帯に文字が載る形になるので、刺繍の上に刺繍を重ねることになります。糸どうしの噛み合いなどもあり、判読できなくなる可能性が高いです。
相対的に見た場合、「Since1950」や刀と鞘の絵が大きくなる円形、またはフチなしのパターンが刺繍向きであるといえます。
【b.パッチのフチを考慮する】
刺繍パッチの最も脆い部分は、フチの部分です。
ホツレ止めのために、ロックミシンか刺繍でフチかがりをしておく必要があります。なので、フチなしのパターンは直接刺繍の場合のみ使える図案で、パッチ向きではありません。
また、②に示すような角の部分はめくれやすく、真っ先に傷みます。洗濯でも衣類とこすれあったりしますし、湿気や水分の変形でめくれあがってくるので、あえてこの形で刺繍するなら、角を少し丸めるとよいです。
余談ですが、フチの処理についてはミリタリー業界では「メローエッジ(ロック加工)」が人気があります。人気というか「メローエッジが本物」という風潮ですね。
でも、実際に部隊の方からお話を伺うと、メローエッジはすぐにボロボロになるのであまり好まない隊員さんもいらっしゃいます。
刺繍をやってみてわかることですが、メローエッジは慣れが必要で複雑な形状には職人的な技術が要求されますし、新品状態でのフチは最も綺麗です。何よりもメローエッジは施工性がよく、次に示すヒートカットに比べると短時間でフチを作ることができ、また、失敗しても再び加工しなおすのでロスが少ないというメリットがあります。要するに大量生産向きなのがメローエッジというフチ処理方法なのです。
米軍ミリタリー業界では階級章やインシグニア(部隊章)パッチなど大量生産するさいには、どうしても施工性が優先されますから、そういう意味では流通が多くある意味「本物」と言えますが、一方で専用のロックミシンの流通が少なく、比例して糸色も少ないので衰退の一途を辿っているのも、メローエッジです。
他にはヒートカッターと呼ばれる上等のハンダごてで焼ききる「ヒートカット」とはさみで切り取る「ハンドカット」があります。
フチを作る仕様ではハンドカットが一番上部ですが見た目が悪いのと、洗濯のときにザラザラした切り口でゴミを拾ってしまいます。メローエッジとハンドカットの中間の性質なのがヒートカットで、sacom worksではヒートカットメインにしています。
sacom wroksのヒートカット/ハンドカットは、メローエッジ風に見せたいという苦肉の策から生まれた(笑)「二重ツイル」という手法です。少しだけ芯が飛び出る形ですが、従来のヒートカット/ハンドカットよりも仕上げは綺麗だと思います。
同業者の有名なところから、メローと勘違いされたこともありますので、たぶん普通のヒートカット/ハンドカットよりも綺麗なのだと自信をもっております(笑)
【c.総合的な観点】
これらを踏まえるとやはり刺繍パッチ化するならば円形が最も向いていると、刺繍屋的には思います。
サイズについては最近支給されている迷彩服に付いているベルクロのサイズ(恐らく8cm)にあわせて作るのがよいと思います。もちろんブラザード型ペン挿しにあわせて大きいサイズで作るのも一つの手ですが、10cmと8cmでは刺繍の都合、4割前後の料金の差が生じます。これは刺繍の針数(というか面積)の影響からです。
実は部隊用パッチの殆どは隊員さんのポケットマネーで作られているので、できるだけ安くしたいというのがありますし、また、国費で買うものでもやはりコストダウンというのは重要な観点だと思うのです。
また、コストの面だけではなく、大きすぎず小さすぎずの8cmなら、”主張しすぎないカッコ良さ”と、刺繍パッチ装着による士気向上の効果があるように感じます。
陸自のヘリパイロット、海上自衛隊の一部や航空自衛隊では大きめのパッチが好まれる傾向にありますが、陸自、特に地上で勤務されている方の間では少し小さめのパッチが好まれているという印象があります。
また、自衛隊法の施工規則などを読み解くと(おそらく現時点では)パッチに関しては公式なものにしか言及がなく、部隊によって理解あるとこと厳しいところがあります。今回のパッチが公式なものとして施工規則に掲載されるかは注目してみたいところです。
非公式の部隊それぞれで製作したパッチでも、パッチで士気があがりましたとか、災害派遣で被災者とコミュニケーションに役立った事例があったりしますし、パッチ交換で演習や海外でのミッションなどで、他の部隊や他国軍との親睦を深められたなどの良い側面あります。
是非とも普及してほしいと思います。
そしたら私の仕事も増えます(笑)
一方で、手袋など華美なものを避けるなどの基準に準拠するなどして、サブデュード化したほうが良いとも思います。
今回の公式エンブレムも、サブデュード化したらかっこよいのではないでしょうか。
なお、図案には金が使われていますが、刺繍のメタル金糸は糸にアルミのメッキをしているだけなので、すぐにボロボロになります。マットな金銀の刺繍糸を推奨しています。これは部隊用に限らず、どの刺繍でも同様な感じです。
なお、製作の検討というお話ですので、今のところ製作予定も販売予定もありません。
部隊の方から「ぜひsacom worksの精度でで作ってほしい」という要望があれば、駐屯地/分屯地あての納品という形で作らせていただくこともあるかもしれません。陸自隊員の皆様、是非ともよろしくおねがいいたします。
いずれにせよ公式エンブレムのため、許可のない形での一般販売予定はありませんので、悪しからず。
宣伝です。
漫画も描いております。
本業は何屋なんでしょう(汗)
コンビニ端末で両替できる”WebMoney”で読めます。
オリジナル刺繍パッチ・ワッペンを作る価格
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