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Posted by ミリタリーブログ  at 

2018年08月23日

自衛隊用パッチについて思うことなど

こんにちは。sacom worksです。
昨日、パッチ関係のつながりのページより、残念なお知らせが届きました。



明野駐屯地の記念行事では、部隊による模擬店がなくなったらしいです。
どうやらこの流れはどうやら全国的なものかもしれない…ということのようです。通達か何かがあったのかもしれません。
ここで、私が知りえる限りの模擬店やパッチ販売についての問題や傾向をつづってみようと思います。
なおここに書いていることは現在リサーチ中のものや、個人的な見解を申し上げています。


【模擬店が抱える問題】
模擬店については以前から「公務員が商売してもよいのか」という問題が付きまとっておりました。

隊員さんにはちょっとしんどいかもしれませんが、売り上げを募金に使うとか、災害での出動のさいの備品等に使うなどし(実際そういう使い方かもしれません)、会計を明瞭にするなどすれば、特段問題にはならないのではないかと思います。
むしろより理解を得やすい交流・広報の場としての模擬店になるのではないかなと。

公務員でもある自衛隊サイドとしては「トラブルにつながるなら開催しない」という流れになりがちですが、楽しみにしているファンの方も多く、広報という意味でも是非とも模擬店があってほしいと思うのが、ミリオタ兼パッチ屋の意見であります。


【sacom worksのパッチスタンス】
さて、sacom worksでは自衛隊各隊からのパッチを多く受注しており、中にはミリタリーやサバゲーをしている人なら「おおっ!」と思う部隊からの受注もあります。積極的にアップしていないのは、部隊によっては運用に支障を来す恐れもあることと、一部のマニアの方からの問い合わせ対策です。

ご存知の方も多いと思いますが、sacom worksでは自衛隊パッチについては、部隊側より「広報目的などのため販売して、活動をPRしてほしい」などの条件がない限り、部隊用パッチを一切販売していません。




今のところ国際射撃大会のAASAM関係と、護衛艦かが(制服のふじ様にて販売中)くらいです。
もしsacom works製の部隊向け(実際に運用しているもの、またはイベント用)パッチが手に入るとするならば、模擬店くらいのものです。
模擬店がなくなるのは、かなり痛いものなのです。

なお、売りませんと書いているのに電話してくる人は、日本語が読めないのでしょうか…
私もマニアなので物欲はありますが、同じマニアだとは思いたくないです。



【転売問題×ニセモノ問題】
模擬店がなくなった理由としてパッチマニアの間で言われている理由の一つに、転売問題があります。
オークションを覗くと、入荷の倍以上の価格で転売されている様子も多く見かけます。

ただ、パッチ屋をしている私からすると、転売問題は非常にお粗末なものがあると。
粗雑な製品(言うなればニセモノ)や、部隊とは全く無関係のパッチをまるで本物のように扱われて、高値で取引されていたりするのです。


誰がそんなものを買うのだろうか。
マニアの方々には、もうちょっと目を肥やしてほしいと言いたいところです。

パッチをコレクションするという楽しみでは、数をそろえることが良いことなのかもしれませんが、そのパッチがどういう由来で販売されているのか、きちんと調べたり考えたり、調べてほしいのです。





たとえばですが、護衛艦かがのエンブレムが発表された際、私は「これは刺繍できないかもしれない」と考えました。
そして一度、エンブレムを所管する海上幕僚監部広報室に連絡し試作品を作りたいと連絡を入れて、サンプルを作ることに。
なんとかエンブレムパッチが完成し、海幕広報室経由で護衛艦かがへ届けられ、仕上がりが喜ばれて現在も隊員さんのもとへ納品させていただいています。

当時は艦艇見学会の模擬店のみで流通していましたが、他の刺繍店が製作した製品が一般流通。
縫い方はこちらで製作したものを真似ていますが、正直な感想を申し上げると技術が乏しく、葉脈や文字などの再現性が低いと感じました。
これが何倍にもなって転売されているのですから、買った人はかわいそうだなと思います。


このニセモノに関しては隊員さんの間でもクオリティが低いという意見で、転売問題やニセモノ問題を解決するために、現在は艦艇に納品させていただいているパッチと同等品を、制服のフジ様に取り扱っていただくことになりました。

価格は割高ではありますが、エンブレムを忠実に再現しており、隊員さんにも喜んでいただけたものを、きちんとした形で購入できます。
不足すれば補充しますので、転売に頼る必要もありません。



【公式品、非公式品、公式っぽい。パロディー】
また、「○○航空祭記念」のようなパッチも流通していますが、中には勝手に駐屯地名やキャラクターを用い商品化している製品もあるとこのことで、実はこれがトラブルになっているという話があります。
実は部隊関係者よりこの手の製品に対する相談を受けたことがあるのです。
あまり他社に対して悪く言いたくないのですが、部隊の担当セクションにはこの手の業者は非常に評判が悪いようです。

部隊用のキャラは公共性が高いとはいえ、やはり部隊側に使用許可を得るなどしないとマズいと思うのですね。
それを知らずにマニアが買い求めてしまっている→転売される・・・悪循環になっているようです。


sacom wroksではアニメやゲームなどの「二次創作」については基準を設けて対応しています。
たとえば「けものフレンズ」や「東方プロジェクト」ならOK。「ガールズ&パンツァー」は一切NGです。これはそれぞれのサイトの基準に準拠する形で、表示のないもコンテンツに関してはすべてNGとしています。


話しがずれましたが、公式品と非公式品、公式っぽい製品の分類や権利関係はとても複雑です。
陸上自衛隊に関しては海外派遣や一部航空部隊を除いては、基本的に隊員さん有志の私費で作られたものが殆どです。

公費で発注される「官品」はごく一部であり、有志で作った私物はまた、非公式でしかありません。
現在は「ミリフォト」などで隊員さんが着用しているのを見て、カッコイイな、欲しいなとなるのがマニアです。
とはいえ鍛錬し今の地位を築いた隊員さんたちのエンブレムですから、隊員さんにとっては特別なもののはずです。


あと、個人的にはパロディーも良し悪しがあると思います。
リスペクトが感じられるものであればすばらしいと思います。たとえばうちで縫わせていただいているやまめパッチなどですね。SEALに対する愛情を感じますし、作っていて楽しくもあります。

一方で「ディスってるの?」となるようなパロディは、注文を受けたときにテンションが下がります。
また、部隊の運用上悪用されかねないパッチ(徽章のパロディなど)は、趣味の範囲であっても本来はマズいことだと考えています。



【パッチの目利きが少ない問題】
私が刺繍パッチ屋を始めたとき、そこまで詳しくはないけれどという前置きはありましたが、よく通っていたミリタリーショップの店長さんよりオススメのパッチメーカーについて教えていただきました。

紹介してもらったメーカーの製品を研究し、自分なりに改良して現在のsacom worksがあります。
ショップ店長や、店長に教えてくれたマニアの方が目利きだったので、私はクオリティを追求することができました。


クオリティと価格はほぼ比例します。
最初のうちは私も低価格路線でしたが、良い製品を作るためには手間がかかるものです。
それだけ手を加えていますから、コストが高くなるのは当然のことです。

友人の自衛官が演習に向けて部隊でパッチを発注することになり、安かったのはいいものの、クオリティが低くしかも海外製だったのでテンションが下がったという話を聞かせてくれました。
パッチというのは部隊の士気をあげる役割もありますから、安かろう悪かろうで良いわけではありません。
業者としてはもちろんコストダウンも考えるわけですが…


これはパッチをデザインする方すべてに言いたいことですが、パッチをデザインするならば既存のパッチをよく見ることです。
糸と生地で再現しますから、できることとできない事があります。
また、絵では綺麗に再現できても、刺繍にすると崩れるもの。また、コストが上がるものなどがあります。

ちなみにデザイン次第でコストはいくらでも下がるものです。
単色で刺繍が少なければ驚くほど単価が下がりますし、単色でもかっこいいデザインは作れるものですよ。


デザイン方法についてはこちらをご覧ください。
http://sacomworks.com/patchdi/



【マニア=目利きであってほしい】
残念ながら、グッズが出れば何も考えずに食いついてしまうユーザーが多すぎることが、模擬店閉鎖などの一つの原因になっている気がします。
知識がある目利きが少ない。目利きの人の声が小さく、とにかく目についた製品を買い求める人の声(拡散力)が大きいだけなのかもしれません。

どうしても欲しいという人が、それがどのような経緯で作られたものなのかろくに調べもせずに飛びつき、それに便乗する転売者が出ます。
転売問題やこれに類するクレーム、また、勝手にキャラクターを使われるなどなど、部隊側の担当セクションを困らせる副次的な問題も発生しています。

また、一部の人達の苦情により、自衛隊のイベント参加が中止に追い込まれるケースが増えています…。
節操がないグッズ販売業者やユーザー、その心理を付いた転売業者によって引き起される諸問題も、模擬店を中止せざるを得ない要因になってしまいます。

トラブルになるなら中止する。
自衛隊も公務員です。
残念ながら公務員とはそういうものです。



皆さんは、模擬店も物販もない記念行事に行きたいですか?
パッチ屋としては近い将来、そういう状況に追い込まれるかもしれないという危機感があります。  

Posted by sacom(モソの中身)  at 12:41パッチ・ワッペン製作